Dマニアブログ

Dマニアブログ〜翻訳から見るディズニーの世界〜

英語と日本語の翻訳的観点から、ディズニー映画の分析、ディズニーランドなどアトラクションの分析、海外ディズニーパークのレポートなどをしております。

ディズニーについて、映画分析、アトラクション分析、イン日記まで色んなこと書いてます。

時々、ディズニーの音楽の訳詞したり、アトラクション説明の訳したり。

アニメや漫画のはなしなんかもしたり。

海外パークと東京ディズニーリゾートの比較なんかしてみたり。

 

【ディズニー事情】ディズニーは夢を押し付ける?⑵ 【ディズニーブログ】

mandy227.hatenablog.com

前回のつづき。。

 

物語の終盤で、ウォルトはこう答えます。

I think life disappoints you. I think it’s done that a lot, and I think Mary Poppins is the only person in your life who hasn’t.

人生はあなたを失望させた

失望させなかったのはメリーポピンズだけだ

 

それに対し、パメラは

Mary Poppins isn’t real.

メリーポピンズは実在しない

 

と答えます。彼女はあくまで、メリーポピンズとはキャラクターとしての存在だと思い込みたいのです。

 

That’s not true.

She’s as real as can be to my daughters. And to thousands of other kids. Adult, too.

とんでもない。娘たちには現実の存在だ。子供たちにも、大人たちにも。

She’s been there as a nighttime comfort to a heck of a lot of people.

多くの人々にとって安心してくれる存在だ。

Give her to me, trust me with your precious Marry Poppins.

どうかわたしにあなたの大切なメリーポピンズを託してほしい

They will see George Banks being saved.

(映画館に集まった人たちは)バンクス氏が救われたことを理解するだろう

They will weep for his cares.

彼に、誰もが涙を流すだろう

They will wring their hands when he loses his job.

彼が職を失う姿に心を痛める

In movie houses all over the world, in the eyes and hearts of my kids and other kids, and mothers and fathers for generations to come, George Banks will be honered.

世界中の映画館で、この先何世代もの子供たちや親たちが

バンクス氏を称え続けていく

Maybe not in life, but in imagination.

現実にではなく想像の世界において

Because that’s what we storytellers do.

We restore order with imagination.

我々物語を創る者は想像力で悲しみを癒す

We instill hope again and again and again.

そして人々に尽きせぬ希望を与える

 

つまり彼は、キャラクターやディズニーが作り出す世界はけして見る者が夢に浸って現実逃避をするために存在しているわけではないのです。

夢を見る、という行為をあくまで受動的な行為だと、パメラは考えていたと言えます。(子供がやるべきことから目を背け、都合のいい魔法に魅せられる、というような)

しかし、ウォルトは、夢を見ることによって得られる想像力には人を癒す力がある、つまり発信的な行為である、と考えているのでしょう。つまり想像力とは、自分の堕落のために使うのではなく、人々のために使うものであるわけです。ディズニーが作り出した想像の世界に浸ることで、それに共感した視聴者は自らのつらい過去を癒すことが出来るかもしれません。それはけして、過去から逃げているのではなく、過去を乗り越えるという行為なのです。

この説得のシーンを経て、パメラはようやく実写化を認めることにしました。

 

ディズニーというコンテンツがなぜこれまで、夢を与え続けることが許されているのでしょうか?

もちろんブランド力というものはあるでしょう。(ディズニーだからあのディズニー映画は面白いに違いない。みんなが買っているからあのディズニーキャラクターのグッズを買おう。ディズニーが作っているのだからディズニーランドは楽しい場所に違いない etc。。)しかし、それだけではないようにわたしは思うのです。あんなにディズニーを否定していたパメラも、最後には実写化を承諾します。ディズニーを単なる子供向けのコンテンツだと思っていてはその神髄は見えてきません。

 

パメラの見方に出会うまで、「夢を与え続けるディズニー」というコンテンツに何の疑問も抱いたことはありませんでした。つまり、「ディズニーがなんで魅力的なの?」という質問に、「夢があるからだよ」としか答えられなかったというわけです。

しかし「夢があるから」という答えでこの質問を片付けてしまうことは、もったいないことです。

 

ウォルトが “Imagination” によって何がしたかったのか。それがディズニー映画には、見え隠れしているからではないでしょうか。まるで、現実に存在している人間かのようにキャラクターたちに共感し、キャラクターと一緒になって自身の感情を大きく動かす。そして、物語の中で得られる「癒し」を受け止め、現実世界で悲しみを乗り越える原動力にしてほしいというディズニーの思い。この根本にあるメッセージこそが、ディズニー映画が、ここまで自由に “Imagination” を操る権利を持ち得る理由なのではないでしょうか。

 

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Close your eyes, dreaming true.

Wishing isn’t something only children do.

Once upon a time is up to you.

—“Once upon a time” in Tokyo Disneyland

 

〜おまけ〜

題名の翻訳について。

原題をそのまま直訳すれば「ミスター・バンクスを救う」となりますが、それが『ウォルト・ディズニーの約束』という形になって日本に渡ってきています。これは、日本においていかに「ウォルト・ディズニー」という人物、もはや単語が人々を引きつける力を持っているかを物語っているような気がします。実際、わたしのようなディズニー好きはまんまとこの映画に釣られているわけですから。。きっと「セイビング・ミスター・バンクス」という題名の映画だったのなら、わたしは「なんとなく」見なかったはずです。