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Dマニアブログ〜翻訳から見るディズニーの世界〜

英語と日本語の翻訳的観点から、ディズニー映画の分析、ディズニーランドなどアトラクションの分析、海外ディズニーパークのレポートなどをしております。

ディズニーについて、映画分析、アトラクション分析、イン日記まで色んなこと書いてます。

時々、ディズニーの音楽の訳詞したり、アトラクション説明の訳したり。

アニメや漫画のはなしなんかもしたり。

海外パークと東京ディズニーリゾートの比較なんかしてみたり。

 

【ディズニー事情】慣れ親しんだ日本語版ディズニー楽曲の本当の姿⑴【ディズニーブログ】

以前にも、ディズニー音楽の翻訳について述べた記事がありますが、字幕の翻訳歌の翻訳は、いったい何が違うのでしょうか?

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↓以前の関連記事↓

mandy227.hatenablog.com

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ディズニー音楽を例にあげながら、その違いにせまってみましょう。

  

 

例えば、歌を訳すとき、英語より日本語の方が、言葉の入る尺はとても短いです。

これは、音楽に限らず言えることですが、文章に表すと文字数的には、そこまで差はなくとも、歌にはめこんでみると、その尺で言えることは、日本語の方が明らかに少ないのです。

例えば、アナと雪の女王』の “Let It Go” なら、日本語で「ありの〜ままで〜」と歌っている間に、英語では “Let it go, let it go” と2回も繰り返すことが出来てしまうわけです。

その限られた尺の中で、英語と近い意味を当てはめなければいけないのが、歌の訳というわけです。

その上、訳された歌が、キャラクターによって歌われる場合、ディズニーのようなアニメーションならそのキャラクターの映像の口の動きに合わせた訳を作らなければいけないわけです。

 

例えば、 “Let It Go” なら、 “Let it go” の “go” の口の動きが「ありの」と同じOの母音で終わっていることから、この言葉が選ばれたのではないか、と考えられます。

(前の記事でも書きましたが、この歌の主旨は「ありのままで」というより、「解き放って」や、「どうにでもなれ」といった少し投げやりなテイストが入った方が、原曲の意味をくみ取れると思いますが、あえてそう訳さなかった、もしくは訳せなかったのは、この尺の問題と、口の動きの問題が関係しているように思います。)

 

ここで、日本語に訳されたディズニー音楽を少し見てみましょう。

例えば、 “Snow White” の “Someday My Prince Will Come” は「いつか王子様が」と訳されています。

直訳すれば、「いつか私の王子様が来てくれる」となりますが、あえて「来てくれる」の部分をはしょることで、よりシンプルな題名になっていますね。

英語は、 “will come” をはしょってしまうと、文章そもそもの意味が伝わらなくなってしまいますが、日本語は違います。例え、「来てくれる」という言葉がなくても、プリンセスのお話という前提がやんわりとでもわかっていれば、「いつか王子様が」とまで言われば、「あ、白雪姫が、王子様が迎えに来てくれる日を夢見ている歌なんだな」と想像、推測することが出来るわけです。これが、日本の決定打を言わずとも伝わる文化です。

 

次は、『リトル・マーメイド』の “Part of Your World” です。多くのディズニー音楽がそうかと思いますが、わたしたち日本人は子供の頃から、日本語バージョンのディズニー音楽に触れる機会の方が多いように感じます。

私は、日本語バージョンを聞いて育ったので、そっちが自分の当たり前のようになっていましたが、原曲の英語を聞いてみると、多くの部分がはしょられていることに気付きます。

 

  • 「」=私個人が訳したもの
  • 青字=ディズニーによる日本語吹き替え版の楽曲の歌詞

 

サビの

“Wanderin’ free. Wish I could be part of your world.”

というところは日本語では

自由に 人間の世界で

となっていますね。

直訳すると「自由にさすらうの。あなた(人間)の世界の一部になれたらいいのに。」

ですから、大きくはしょられていることがわかります。それでも、意味は大きく変わらないまま、尺と口の動きに合わせて訳されていますね。これも、「人間の世界で」というだけで、そのあとに続くであろうアリエルが望んでいることが推測出来るために、口述いらずなわけです。

“And ready to know what the people know. Ask’em my questions and get some answer. What’s a fire? And why does it (what’s the word?) burn?”

というところは、

ああ、わからないことたくさん 教えてほしいことたくさん なぜ火は燃えるの 教えて

となっています。

直訳するのなら、「人間のことを知る準備は出来ているのよ。たくさん質問して答えてもらうの。火って何?それでなんで(なんていったっけ)燃えるの?」と訳したいところです。

しかし、こんなに長い文章は歌には入らないわけです。やはり、尺に合わせると、ちょっとしたニュアンスなんかは訳すときに捨て去られてしまうのは少し寂しいですね。 “ready to know” はアリエルがずっと知りたくて仕方ないことを知る準備はとっくに出来ているというニュアンスを出していますし、 “Ask'em(themの省略形)”など “them” の存在によって人間とアリエルの対話が思い浮かぶような気もしてきます。

 

 

つづく。。